木工技術の宝庫、徳島

全国に点在する木工産地のなかで、徳島が誇る秀でた技術とは何か、特筆すべき点は何かのご紹介

塗装・磨き

家具会社で「塗装・磨き」までできる。工程の分業化が進む全国の木工業界において、この強みはもはや徳島にしか存在しないのではないでしょうか。塗装は一般的にうす塗りと呼ばれるウレタン塗装と、厚塗りと呼ばれるポリエステル塗装に大別されます。機械的に処理されるうす塗りに比べ、研磨工程が多く手加工も欠かせない厚塗りは、独特の冴えた光沢や質感を生みます。日本伝統の「漆塗り」を模して西洋で開発されたこの技術。日本人の美意識に響くのは当然のことなのかもしれません。徳島の家具会社は、この厚塗りを得意とします。「木地に5mmほどのポリエステルを塗装し、複数の番手で研磨を重ね、バフ、コンパウンド、ワックスで仕上げていく。1mmほどの厚みになるまで丹念に磨きあげる」。その板面は鏡のように美しく、そして鏡にはない重厚な輝きを放ちます。

杢張り

杢張りとは天然木を0.2mm程度にスライスし、木地に張る技術。塗装・磨きと並ぶ、徳島の特長的な木工技術です。鏡台や仏壇の一大産地として飛躍を遂げた徳島ならではの技術資産とも言えます。樹種独特の美しい木目を、同一の空間内でトータルにコーディネートしたい。そんなニーズにも杢張りは欠かせません。
機械化が進むなか、伝統的な「手張り」も今なお徳島では息づいています。曲面に手で後張りする技術は徳島にしかありません。徳島の家具職人は、箱根細工や象嵌とも異なる、徳島の杢張りならではの技術や世界感を伝統技術に融合させることによって、新たな可能性を模索しています。

脚モノ

豊かな森林資源を背景に、無垢材を活かしたイス、ソファ、テーブル等のいわゆる「脚モノ」にも高い技術力を誇る徳島。木地の選定から、加工、組立、塗装、裁断・縫製、張り込みまでの作業を一貫して仕上げることができます。自社オリジナル製品を優先生産する大手メーカーとは一線を引き、別注品やコントラクト需要に緻密に対応する生産体制も魅力的です。建築家やデザイナーの自由なイメージを、リアルな家具として具体化していくノウハウがあり、多くの海外有名メーカーとの取引実績や高級ホテルへの納入実績が、そのクオリティと信頼性の高さを物語っています。

建具

多様化する住環境のなかでも、日本の気候風土に根ざした木の家造りは世代を超えて根強く支持されています。また鉄骨やコンクリート造の住居にも、和みや癒しをもたらす和の空間を残したいと願う人は多く、和の伝統空間に欠かせないの障子や襖といった木製の建具は、高度経済成長期ほどの需要こそありませんが、徳島の高精度な技術は連綿と受け継がれており、高度な組子細工や徳島の豊かな自然美をモチーフとした「阿波指物」も近年注目を浴びるなど、徳島の建具技術は未来を見据えて、今も進化を遂げ続けています。

厚板貼り(練り)

徳島の唐木仏壇の製造過程で開発・発展した木工技術で、唐木を5ミリ程度の厚さにスライスし心材の表面に貼るという工法です。唐木は反り、ねじれ、割れなどが入りやすい性質があり、また、唐木同士では接着しにくいなど、非常に扱いにくい材料である事から試行錯誤を繰り返しながら開発された技術です。これにより、すべて無垢材を使用したモノと変わらない最高級な質感と品質を維持ながら軽量化、コストダウンを図り、さらに木の反りや割れを防ぐことができるようになりました。また、使い込んで年数が経つと色合いや艶に深みが増すことや、磨き直せばもと通り新品のような輝きが戻るところも大きなメリットです。
心材の周り全てを木で囲んで貼る「四方厚板貼り」、前面と左右の三方向に貼る「三方厚板貼り」、前後に貼る「二方厚板貼り」、前面だけに貼る「一方厚板貼り」の4種類があり、厚板貼りの数が多いほど高級品となります。

一貫生産&総合力

上記の木工技術に加え、徳島という木工産地の特筆すべき点が二つあります。一つは一貫生産力。木地の選定から仕上げまでを一社で完結できること。複数社にまたがる分業でのモノづくりは一見効率的に見えますが、実は責任の所在が不明確になり品質低下やメンテナンス不備の原因ともなります。気心の知れた職人同士が、引き継ぐ相手の仕事のしやすさを考えつつ自分の仕事を全うする。品質や精度は、そんな目に見えない気配りの積み重ねが生み出すと言っても過言ではありません。もう一つは、総合力。成型や寄木といった各種木工技術にもオールラウンドに対応できる受け皿を備えている。企業間の垣根を超えた強固なネットワークも、また目には見えない価値や効果を生んでいます。1本の別注品から1000本の量産品まで、「できないものはない」のが徳島という産地の大きな特長です。